介護士は対人援助の専門職であり、介護サービスを必要とする利用者の日常生活を全般的にサポートすることが、基本的な仕事内容になります。ちなみにこの利用者とは、身体上または精神上の障害によって、日常生活に何らかの支障をきたしている人々を指します。また日常生活とは一般の健常者と同じく、起床してから洗顔や朝食そして身支度や排泄をして、日中は職場や学校または家事や育児などを通じて社会的な役割を果たし、帰宅後は夕食を食べて入浴して就寝に至るように、一定の生活パターンを意味します。
ただし生活パターンといっても、実際には各人が成長しながら培ってきた価値観や習慣、あるいは地域の文化や人々との関係性など、多彩な要因が複合的に絡んでおり、1つとして同じものは存在しないのが現実。つまり日常生活とは極めて個性的なものであり、人それぞれが独自に持つ固有の生活スタイルであると言えます。このため介護士が仕事をするにあたっては、利用者の日常生活が個性的で独自性のあるものと認識した上で、各自に合った介護サービスを提供する必要があります。
その際に不可欠になるのが共感的理解です。これは利用者一人ひとりのおかれている状況や心情そして個性などを、あたかも介護士自らのことのように感じながら寄り添い、相互に支え合う気持ちのこと。アメリカを代表する心理学者の1人であるカール・ロジャーズは共感的理解について、介護する側が一切の価値観や審判的な態度を持たずに、利用者の内的世界である感情の部分へ完全に寄り添うことであるとロジャーズの3原則の中で述べています。このように共感的理解は、介護士であれば必ず身につけるべき基本的態度と言えます。